人生で初めて兄に手紙を書いた

さきほど、人生で初めて兄に手紙を書いた。

といっても内容は同封したNintendoSwitchについてであったり、歯医者代は高いからこまめに歯の点検に行くようにだったりだとかの他愛もないものである。
多分兄も「なんだこりゃ」と思うだろうし、手紙を入れながら私も「なんだこりゃ」と思った。


だが、基本的に私は兄に対してなんだこりゃ、と思われるような妹であるので別にいいかと思い、そのまま宅配便に出した。

 

兄とは、一年のうちの九ヶ月を一歳違いで過ごし、あとの三ヶ月を二歳違いで過ごす。なんのことはない。

兄が迷惑にも正月の三が日に生まれ、私は九月に生まれた。それだけのことである。
小学生のころ、兄のことは嫌いであった。正確に言うのであれば、兄に付属する様々なものが嫌いであった。
分けなければならないおやつ(しかもだいたい兄が多めにとる)、先に享受されるたのしいイベント、そして兄が一月生まれであるがゆえに不平等だと言って親に禁じられた誕生日会。


子供のころの私は年相応にわがままで鈍感で、嫌な人間だった。
だからこそ、そういったものを嫌ったし、今でもある程度恨みに思うことがある。

 

大学生になって、私と兄の関係はそれなりに改善した。何のことはない、兄が遠方に住むことになり、たまにしか会えないようになったからである。顔を合わさなければ喧嘩する理由が減る。
さらに言えば、その頃私は大学生にしてはそこそこバイトで稼いでおり、金銭的に余裕があった。金持ちは喧嘩しない、ではないが心にある程度余裕があったのだ。人間なんてそんなものである。いや、これは主語が大きいか。私なんて、そんなものです。

 

私はそれから、色々あって成人してからの家出をし、それからなんとなく一人暮らしを始めた。当時兄はそのことを「まぁせやろな」と肯定するでもなく、否定するでもなかった。
私が実家に適合できていないのを察していたのだろうと思う。

兄は一年に二回ほど、私の家に酒を送りつける。
兄の住まう、遠い北の国の酒。
それを落ち掛けた日に透かしてみる。
と、子供のころに実家の廊下に寝転がった私が見た、やるせない淡い夕日に似ているような気がした。